2017年10月03日

「葛」の字体について

先日(2017.9.30)桑沢デザイン研究所で行われた「佐藤敬之輔 再考 明日のタイポグラフィを考える」でのこと。
パネリストの葛西薫さんの「葛」はどの字体なんですか?という話題が出た。
つまり下部が「人+L(ひとかぎ)」なのか「ヒ」なのかという質問。
葛西さん曰く「どちらでもいいです」。
さすがに字体のなんたるかを知っている人だと敬服した。
葛西さんは子どもの頃、お母さんからは「メ+L(メかぎ)」だと教わっていたが、後に印刷物を見たら「人+L(ひとかぎ)」だった。それで手書きの「原戸籍(はらこせき)」を調べたら「ヒ」だったのだという。

「葛」は『説文解字』の親文字では、「縦組みの丸括弧の閉じ括弧を横に2つつなげたような形+L」になっている。
この「縦組みの丸括弧の閉じ括弧を横に2つつなげたような形」を手書きするときの解釈で「人」にもなれば「横線」にもなる。前者が「人+L(ひとかぎ)」で後者が「ヒ」である。
主に石に彫られていた篆書が手書きされるようになったときに「ヒ」になった。「ヒ」を使う「葛」は隷書や楷書などの手書きを元にできた書体の字体。「人+L(ひとかぎ)」は明朝体などの印刷する文字に採用されてきた字体である。

「当用漢字表・当用漢字字体表」は手書きの字体と印刷の字体を統合してきた。
「渇、掲、喝、褐、謁」は「当用漢字表・当用漢字字体表」および「常用漢字表」では手書きの字体が採用されたが、「葛」は当用漢字でも常用漢字でもないので明朝体の字体は「人+L」のまま手つかずだった。
だが、1983年のJISの改訂で「葛」の字体が「ヒ」に変更されてしまった。2004年のJISの改訂で再び「人+L」に戻された。

下に拙著『文字の骨組み』の「葛」の字体について説明したページの画像を貼っておきます。

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posted by トナン at 16:26| Comment(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする