2023年05月23日
字体変遷字典 【手】抄折択投把
【抄】『教育上より見たる明治の漢字』では「鈔」を標準字、「抄」を許容字としている。
【折】説文解字に「艸」に従う字体、「手」に従う字体、籀文の3つが掲載されている。古代の字を見ると「手」ではなく「艸」に従っているようだ。長沙子弾庫楚帛書と説文籀文の字体が一致する。
【択】「擇」の新字体。説文解字の大徐本と段注本で例示字体が異なる。漱石は明治39年の『坊っちやん』では「擇」を書き、明治43年の『不折俳画』の序文では「択」を書いている。空海の『聾瞽指歸』には旁に角がある。
【把】昭和21年の当用漢字表にはなく、昭和56年の常用漢字表に加えられた字。
2023年05月16日
字体変遷字典 【手】打払扱托技抗承
【払】陸軍幼年学校用字便覧に「實は別字」とある。康煕字典には「払」と「拂」は別字種として掲載されている。「拂」の略字としての「払」と「拂」と別字種の「払」が字体衝突している。
【扱】康煕字典には「手」の4画にあるが、例示字体の画数を数えてみると3画しかない。旁に「及」を持つ字には4画のものと3画のものがあり不統一。康煕字典の字体そのままのものを「康熙字典体」といい、「扱」の「及」を4画にするなど不統一を統一したものを「いわゆる康煕字典体」という。
【托】陸軍幼年学校用字便覧に「託」を正體、「托」を別体として掲載されており、「實は別字」と説明がある。
【技】干禄字書に「伎」が「技」の俗字として載っている。咎なし点が付くことがある。
2023年05月07日
字体変遷字典 【戸】戻所扇【手】手才
【戻】1981年3月23日に常用漢字になった字。旧字体は「戾」。説文解字にも康煕字典にも「戾」とは別字種として「戻」があり紛らわしい。つまり「戾」の新字体の「戻」が別字種の「戻」と字体衝突したわけ。中国、台湾、香港はともに下部が「犬」だが、別字種との字体衝突を避けるために日本でも下部を「犬」にしておくべきだったとおもう。漱石は同じ意味で下部が「大」と「犬」の両方の字体を書いておりたいへん興味深い。
【房】居延漢簡は「方」が右にずれて「所」と間違えそうな字形。九成宮醴泉銘は珍しい字体で他にこのような字体は見えない。太宰治は手書きにはめずらしい字体を書いている。
【手】説文解字と五経文字には才部に分類されているが、康煕字典では手部にある。カタカナの「オ」の形に書く場合も多い。