2009年05月17日

『漢字整理案』「前書き」文部省普通学務局 大正8年7月

拙著『文字の骨組み 字体/甲骨文から常用漢字まで』の第3章資料編に掲げたものですが、紙幅の都合で大きく掲載できなかったので、このブログに掲載します。

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現今我が国に行はるる漢字を見るに、其の字形音訓及び用法等に於て整理を要すべきもの甚だ多し。今字形に就きて之を見るに、従来一般の標準たる康煕字典に於ても、まま統一を欠き或は煩冗に失するものあり。此の如きは国民教育上漢字教授の徹底を期すること困難なるのみならず、実際の不便亦尠しとせず。故に現今の漢字に就きて其の統一を図り整理を行ふは今日の急務なるを認め、先ず字形の整理に着手し、漸次字音字義及び用法等に及ばんとす。
本案は尋常小学校の各種教科書に使用せる漢字二千六百余字に就き、康煕字典を本として整理を行ひたるものにして、大要字画の簡易運筆の利便なるものを採り、或は字形の釣合を調へ、小異の合同を図るにつとめたり。
世俗慣用の文字には訛謬のものなきにあらざれども。必ずしも一概に之を排斥すべきにあらず。故に簡単にして書き易く、又は慣用既に久しく且広きものを選びて使用を許容することとし、之を巻末に掲載せり。
本案の文字は文学博士上田万年同服部宇之吉同林泰輔松井簡治岡田正之保科孝一諸橋轍次後藤朝太郎山口察常の調査選定せるものにして将来広く国民教育上に採用せんとする見込みなれども、今先づ之を公にして普く世の批評を求むることとせり。
   大正八年七月   文部省普通学務局
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