たとえば常用漢字表の本表の前の解説(以下「前文」という)では「木」の縦線は止めてもハネても良いことになっているから,学習指導要領に示された教育漢字で「木」の縦線がたとえ止めてあったとしても,児童,生徒はハネて書いてもいっこうに構わない。教師は「木」の縦線をハネた字にバツをつけることは許されない。
常用漢字表の前文を見てみよう。
画像でも読めると思うが,テキストに起こしておく。
第2 明朝体活字と筆写の楷書との関係について
常用漢字表では,個々の漢字の字体(文字の骨組み)を,明朝体活字のうちの一種を例に用いて示した。このことは,これによって筆写の楷書における書き方の習慣を改めようとするものではない。字体としては同じであっても,明朝体活字(写真植字を含む。)の形と筆写の楷書の形との間には,いろいろな点で違いがある。それらは,印刷上と手書き上のそれぞれの習慣の相違に基づく表現の差と見るべきものである。以下,分類して例を示す。
明朝体が手書きの字体をまねることによって,かえって違いがあやふやになっている。常用漢字表が違いを認めているのだから,違って良いのである。
伝統的な行書や楷書では「北」の旁の1画目は左から右に書く。
手書きの字には必ずしも筆押さえはついていない。明朝体の筆押さえは空中での筆の軌跡を図案化したもので,横線の右端にある三角形の「うろこ」と同様に明朝体の特色。
学参フォントがビミョ〜に縦線を曲げているのを見るとなんだか切なくなってくる。
文部科学省の人,お願いです,教師や児童・生徒に「明朝体と手書きの字は違うのだ」ということを教えてください。それにはこの常用漢字表の前文を見せさえすれば良いのです。そうすればこんなトホホなフォントを作る必要も使う必要もないのです。
しんにょうは「彳(テキ)」と「止」の合字で,「止」は略体になって横に伸びた。隷書のしんにょうを見ればわかるように3点だった。3つの点が「彳」である。
この3つの点の2つ目からつなげて書いたのが「1点でくねるしんにょう」でくねる部分が3つ目の点にあたる。3つの点の3つ目と「止」の略体をつなげたのが「2点でくねらないしんにょう」である。つまり「1点でくねるしんにょう」と「2点でくねらないしんにょう」は同じモノである。
しんにょうの点の数だけを数えるのではなく,くねるかくねらないかも一緒に見るべきだ。
当用漢字の「1点でくねらないしんにょう」は隷書のしんにょうと比べると1画足りないことになる。「2点でくねるしんにょう」というのもあるが,これは「止」の略体に楷書の起筆がついてこれが「くねり」になったものだろう。