翔平さんは高校1年生だそうです。高校1年生からこういうことに興味があるなんて,将来有望です。ボクなんか高校1年生のときは何にも考えてなかった。
翔平さん,ありがとうございます。
それにしても翔平さんは字が上手ですね。書道を習っているのかな?
〈翔平さんからのメール〉
コメントさせていただきました、翔平と申すものです。
両面印刷をしたので大変見難くなっておりますが、ご容赦ください。
手が震えてうまく書けていませんし、何度も消して見づらいかと存じますので、
「補足」と名前の付いている画像に祖母の証言を元に再現した文字を書いておきました。
右に○印が付いているものは解答を見たものです。
祖母は大正15年(昭和元年)の6月生まれで、兵庫県三田の出身です。
筆書きと鉛筆書きで習った字は違ったか。と聞いたところ「同じだった」と申しておりました。
一字一字詳しく聞きましたので、うろ覚えながら会話風に内容をかいつまんで書かせて頂きます。
筆書きと鉛筆書きで習った字は同じだったとおっしゃっていますが,無意識に違う字体を書いていたのではないかと思います。
「衛」(解答見ました)
祖母「どんな字だったかな……思い出せない」
私「こんな字じゃなかった?」
祖母「そうそう、思い出した。五書いてロ(ろ)かいてヰだった」
私「上は五だった?横線あった?」
祖母「ある。なんせ ゴロイ で覚えてるから」
「横」
祖母「横なんて今と一緒」(書きながら)
私「小さく横棒無かった?」
祖母「無かった。」
「穏」(解答見ました)
祖母「穏やかってどんな字?」
私「こんなんじゃなかった?」
祖母「こんなんだった」(書きながら)
私「ノの下にツだった?中にしめた?」
祖母「ノツヨだった。」
私「ヨはちょっと突き出す?」
祖母「突き出す」
私「ツとヨの間に、エは入ってなかった?」(見せながら)
祖母「そんなのは無かったように思う」
「会」
祖母「カイっていったらこの字?」
(「回」と書いたので)
私「違う違う。あのー、屋根書くやつ」
祖母「あー、違う違う」
私「(書き終えて)中は点々だった?」
祖母「一書いて四みたいなの書いて日だった。内側に点々って書いた。」
私「この四みたいなのの真ん中の線は上に突き出した?」
祖母「突き出さない」
「偽」(解答を見ました)
祖母「どんな字だったかな……昔のことだから思い出せない。読むのは読めるけど。」
私「こんな字だった?」
祖母「そうそう、イ偏(ニンベンと言わずイヘンと言っていた)に為。」
私「これもノにツだった?」
祖母「そうそう。その下になんせ、ややこしいやつがあった。」
「塩」
祖母「これは今と一緒」(すらすらと書きました)
「恵」
祖母「恵みって言ったらこの字」
私「ここのムは離した?」
祖母「離した。ここまで書いて、ム」
(この字に関しては、祖母の名前に含まれるので、間違いないと思います。)
「軽」
祖母「車に、こうこう書いてエ」
私「ここは く を三つ?」
祖母「そう三つ」
「虚」(解答見ました)
祖母「思い出せない」
私「虎の頭かいて・・・」
祖母「虎の頭……?わからない」
(解答を見せて)
祖母「あーこんなんか」
私「この下はチョンチョンだった?カギ見たいなの書かなかった?」
祖母「どうだっただろう……」
(長らく悩んだ末)
祖母「点々やった。点々やったと思う。」
「撃」(解答見ました)
祖母「せめるっていう字……わからない」
私「車見たいなの書いて」
祖母「こうかな」
私「ここの車見たいなところどう書いた?山みたいなのつけた?」
祖母「山じゃなかった。ムみたいなの。」
私「車書いてム見たいなの?」(書いて見せる。補足に書いてある字です。)
祖母「そうそうそんなの。」
「飲」
祖母「これはこう」
私「食偏は点だった?横線みたいなの書いた?」
祖母「こうだった。点。」
「関」(解答見ました)
祖母「今の字とは違うけど、思い出せない」
私「こんなのだった?」
祖母「あぁ、糸書いて……」
(門構えの中を何度も何度も書き直しました)
祖母「あー、糸の頭2つ書いて、こうこんなやつ」
(「卯」の一画目をなくした字を書く)
私「2個目のカギは下向いてた?」
祖母「どっちも上向いてた」
(最終的に言ったのは旧字と同じものでした)
「状」
祖母「ジョウって言ったら……こうカギ書いて」
私「ここはカギだった?点じゃない?」
祖母「そう。カギ」
「真」
祖母「マはこう」
私「上はヒ書いた?ここは曲げた?」
祖母「上はヒでここは曲げた。」
「青」
祖母「アオは……こう」
私「ここは円だった?」
祖母「月って書くやつもあった。」
私「習ったのは円?」
祖母「そう」
「蔵」(解答を見ました)
祖母「(ぱっと解答を見て)そうそうこの字」
私「この横のところ点々だった?」(最初はンのように点で書いていた)
祖母「いや、こうカギ書いた」
私「くさかんむりはここ離した?十、十、って書いた?それとも、真ん中あける形?」
祖母「この真ん中あけるのだった」
「遅」(解答を見ました)
祖母「どんな字だったかな」
私「この字だった?この字だった?」
祖母「うーん」
私「中、羊だった?」
祖母「羊だったような気がする。」
私「こんな字は書かなかった?」
祖母「分からない」
私「シンニョウはどうだった?」
祖母「点書いて、くねらしてこう。」
私「ここ、クネクネって曲げた?」
祖母「点かいて、曲げない字違うで、あれは略字で、点書いてクネクネしなあかんで」
「秘」
祖母「どんなんだった?」
私「こんな字じゃなかった?」
祖母「そうそう」
私「ここノギだった?示?」
祖母「ノギだった。」
「北」
祖母「北はこう」
私「ここ突き出なかった?」
祖母「いや、こう。」
「来」(解答見ました)
祖母「どんな字だったかな・・・・・・なんせ、ややこしかったように思う」
私「こんな字だった?」
祖母「いや、なんかもっと難しかったような……こんなんやったかもしれない」
私「ここに横棒あった?」
祖母「人書いて木やったように思う」
およそのところこのような感じです。
「昔のことだから覚えていない」とか「読めても書けない」と何度も言っておりました。
祖母が大変心配症なもので、「間違った字を書いたらどうしよう」とか言うもので、わからなかったら書かなくてもいいとは言ったんですが、
答を見せるよう言われたので、見せました。
ぐだぐだなものになってしまって申し訳ありません。
失礼いたします。
翔平さんのおばあちゃんが習ったという字体を見ていきます。
〈衛〉一画多いですが,通用体です。文部省活字が通用体です。「ゴロイ」と覚えていたそうですから,一画多い字体をはっきりと覚えていたようです。これで思いついたのが〈「五」の一画目をなぜ略す〉です。
〈横〉通用体です。文部省活字が通用体です。
〈隠〉通用体です。文部省活字は正字体です。
〈会〉繁体の正字体です。文部省活字も繁体の正字体です。現在の「会」は略字体。
〈偽〉繁体の正字体ですが,手書きの筆画です。文部省活字も同様。
〈塩〉略字体です。文部省活字も同様。
〈恵〉正字体の手書き字体です。明朝体とは違います。文部省活字と同じ。
〈軽〉繁体の正字体です。文部省活字も同様。現在の「軽」は略字。
〈虚〉通用体の手書きの筆画を書いています。文部省活字とは違います。
〈撃〉正字体です。文部省活字も同様。
〈飲〉通用体の手書き字体です。文部省活字も同様。
〈関〉正字体です。文部省活字も同様。
〈状〉印刷字体特有の字体です。文部省活字も同様。
〈真〉正字体です。ただし,明朝体のように「ヒ」の二画目をはねていません。「ヒ」の後は下の「目」を書くから,上にはねると筆脈がつながりません。文部省活字も同様。
〈蔵〉印刷字体特有の字体です。文部省活字も同様。
〈遅〉通用体です。文部省活字とは違います。
〈秘〉通用体です。文部省活字とは違います。
〈北〉手書き字体です。文部省活字も同様。
〈来〉正字体です。文部省活字も同様。
字体は次の角度から見ました。
1)繁体字か略字か
2)手書きの筆画か印刷の筆画か
3)正字体か通用字体か
他に
4)書体による字体の差
があります。
改めて見なおしてみると「秘」に解答を見たというのが抜けていますね……。
手書きの方には書いているのですが、申し訳ないです。
それと、字体インタビューを友達にもやってもらったのですが、メールで送ればよいでしょうか?(やり易いように、手引きなるものを勝手に作ったのですが……)
コメントありがとうございます。
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