2011年04月07日
「俺」という字の使用例を求む
「俺」という字は使用例がほとんで発見できません。
使用例がないから新しい字なのかというと、そうではなく西暦100年に編まれたという『説文解字』にも載っている字で,
音読みは「エン」です。
「青空文庫」の『坊っちやん』(ちくま日本文学全集 1992年)には最後の山嵐とわかれるシーンで「俺」が2度使われているのですが、『直筆で読む「坊っちやん」』(集英社新書ビジュアル版)で確認したところ、手書き原稿では「おれ(連)」となっています。初出の「ホトトギス」(1906年4月)でも「おれ」となっているようです。
辞書になら載っているかと『言海』(1889年・明治22年初版)を調べたのですが「おれ」という項目がありません。
ツイッターでつぶやいたら@p_typoさんが「小原夢外『破れ恋 家庭小説』東京:大学館,明40.7 http://bit.ly/efLclD “俺が悪かった”を見付けました.」と教えてくれました。
そんな話を夕食のときにしていたら、父を不憫に思ったのか娘が国会図書館の「近代デジタルライブラリ」で調べてくれました。
「近代デジタルライブラリ」はテキストの検索はできませんが、見出しの検索はできるのですね。
娘に教わりました。
「俺」を1人称で「おれ」として使っている例では、尾崎紅葉『金色夜叉』(1898年・明治31年)の第一巻6章76頁がもっとも古いようです。
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/886443
もっと古い使用例では『絵本佐野報義録』(1887年・明治20年)第五編54頁にありますが、「俺子」で「わがこ」と振り仮名があります。
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/877895
さらに古い例では『薬性論(敏氏)』第四冊四(1875年・明治8年)に「満俺」を(鉱物の)「マンガン」と読ませています。
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/837693/18
もっと古いのがありました。『理礼氏薬物学 17巻』[第5冊]巻之5(1871年・明治4年)にも「満俺」があります。
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/994910/37
「俺」のもっと古い使用例や、初めて載った国語辞典、歴史が古い字でありながら使われなかった理由などをご存じの方は教えて下さい。
この記事へのトラックバック
古代から俗語的な字だったのかなあ。
すごく興味深いことをなさってますね!
差し上げたツイートが埋もれてしまったかなと思いますので、もう一度こちらでご案内します。
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日本国語大辞典によれば、「おらがの(俺がの)」の初出が
人情本・軒並娘八丈(1824)の四「木地の女房に越した者はない。イヨ俺(オラ)がのめ」とのこと。
国会図書館の近代ライブラリーで、成立年とあわせて確認できれば最高なのですが、まだ試しておりません。
国会図書館の近代ライブラリーで『人情本・軒並娘八丈』を検索したのですが、ヒットしません。残念。
手書きの書にも印刷にもほとんどないです。
http://tonan.seesaa.net/article/193519530.html?reload=2011-04-11T16:07:09