2011年08月09日

【字体変遷字典】6-5 【八】兼【冂】円内冊再


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【兼】楷書では下部が「灬」になる字体が一般的。干禄字書の序文には2種類の字体が使われている。
【円】「円」の字体は中国では使用例が見えない。日本では空海の「三十帖策子」に使用例があり、その後ずっと使われ続けている。「円」は「圓」の「員」を縦線に略してできた字体だと思われる。弘道軒に「圓」の字体が見えない。「圓」は楷書では「員」の「口」を「厶」または「△」に書く。これは四角の連続を避けて変化をつける意識が働いているのかもしれない。「囗」を点2つに略すのは鎌倉時代以降か。
【内】この字の注意点は「人」か「入」か、最終画をハラウか止めるか、の2点。
【冊】説文篆文に倣えば康煕字典にあるように横線が左右に出ない字体になるはず。説文古文の字体は甲骨にも金文にも見えない。康煕字典に「册」は載っていない。文部省活字も「册」ではなく「冊」。太宰が「册」を書いているが明朝体で字を覚えたのだろうか。『明朝体活字字形一覧』によれば、「册」の登場は1860年の英華書院の13.5ポイント、明朝体での「冊」の登場は1887年の大阪国文社五号が最も早い。
【再】説文篆文に従えば横線はすべて左右に出る。真ん中の横線を出さなくなったのは清と江戸時代か。
posted by トナン at 12:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 字体変遷字典(大熊肇試作) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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