
【冗】多くの場合、漢和字典では「冖」の部に掲載されているが、書道字典では「宀」の部に「宂」の字体で掲載されている。説文篆文に従えば「宂」になるはず。五経文字には「宀」の部に「宂」の字体のみ掲載され、しかも「穴」との違いについて説明されている。康煕字典には「冖」の部に「冗」があり、「宂と同じ」とある。「宀」の部にも「宂」があるが、そこには「冗」についての記述はない。漱石は「宂」と「冗」の両方を書いている。畏るべし漱石。
【写】本来は「宀」の字らしい。「冖」や「臼」を「旧」としたり、「旧」の「日」を「目」としたり、「目」の最終画を横に伸ばして「鳥」っぽくする字体の出現は南北朝期から。当用漢字の字体は手書きでは江戸期から使われている。
【冠】「元」の最終画が右に伸びて「にょう」のようになるのは唐代に入る頃から。南北朝期までは「元」の最終画は短くはねていた。それが「礻」に間違われ、さらに「衤」に誤った字体がある。日本上代には「寸」を「刂」とする字体があるが、江戸期の版本には見えない。
【冥】2011年に人名用漢字から常用漢字に出世した字。隷書の時代に「冖」の他に「穴」が出現。南北朝期に「宀」が出現。説文篆文に倣えば「冖」が正字体。