2007年03月03日
〈以〉と〈已〉
〈〉と〈以〉は同じ字種ですが、周代までの字形には〈〉しかありません。秦代以降に〈〉と〈以〉に分かれます。
いろいろな漢和辞典の字源を調べましたが、「〈〉は先の丸いすきの形」というのは共通の見解のようです。さらに複数の漢和辞典には「〈〉に〈人〉を加えたものが〈以〉」とするものがあります。本当にそうでしょうか?
秦から漢の肉筆の字形を見るかぎり、ボクにはそうはおもえません。
このように〈〉を時計回りに90度回転(あるいはさらに上下に反転)させたものが〈以〉ではないかとおもうのです。
〈以〉を漢和辞典で調べると、〈以〉と〈〉は同じ字ですが、〈以〉と〈已〉は別字として扱われています。〈以〉の部首は〈人〉ですが〈已〉の部首は〈己〉です。〈以〉の主な意味は「もって」ですが〈已〉の主な意味は「やめる」です。しかも〈已〉は〈以〉の用法も兼ねています。文字の意味を数式で書くと次のようになります。
ある漢和辞典の〈以〉の項に「已(止む)の倒形で、止むの反対の行う意を表し、もちいる・もっての意に借用する」とありますが、古代には〈已〉の字形はありませんから、逆に後年〈〉を上下反転させて〈已〉とし、違う意味を持つ字を作ったのではないでしょうか。
ところで〈已〉の項に「巳と同字」とある字典がありますが、これには首をかしげてしまいます。
このように〈已〉と〈巳〉は漢代以降は同じ字体で書かれていましたから字体だけを見ればそう言いたいのもうなずけます。
なお、〈巳〉の殷代1と周代1の字体は〈子〉と似ていますのでお間違えなく。
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