

「吉」再考の再考。
「吉」いわゆる「さむらいよし」と、「𠮷」いわゆる「つちよし」問題。
古代はどちらでも良いらしい。
漢代の隷書以降は「𠮷(つちよし)」が圧倒的に多いのだが、説文篆文がたまたま「吉(さむらいよし)」だったために「吉(さむらいよし)」が正字になった。
五経文字は説文篆文にならって「吉」だが親字としての掲載はなく、他の字の説明中にある。
日本でも「𠮷(つちよし)」が圧倒的。江戸時代は使用例が少ないが「吉(さむらいよし)」も現れる。
弘道軒には「吉」「𠮷」の両方がある。
驚くべきことに、漱石は「吉」「𠮷」の両方を使っている。
太宰は「吉」しか使っておらず、正字や明朝活字の影響を見てとれる。
隷書、楷書および楷書の行書は「𠮷(つちよし)」を書き、説文解字の篆文に倣った五経文字、康煕字典、康煕字典に倣った明朝体は「吉(さむらいよし)」を書く。