357頁 キャプション
誤:当用漢字字体表の「正誤」
正:当用漢字表の「正誤」
〈小駒勝美さんからのご指摘〉(2014/05/09)
拙著が使用している当用漢字表ははっきりしないところがありますが、小駒勝美さんが国立公文書館にある「当用漢字表」を拡大コピーしてもらったところ、下記が確認されたそうです。
357頁 当用漢字表の「正誤」
「隱・隠」の正誤の「誤」は旁の上部の「ツ」の方向の違いによるものではない。当用漢字表、正誤表いずれも「爪」だった。ではどこが「誤」なのか、それははっきりしない。
(公文書館所蔵の官報には正誤表による訂正が書き込まれているが、(隱)の箇所に「ゴシクスに非ず」と書かれている。これは(隱)が明朝体でなく、誤ってゴシック体で組まれてしまったという意味かもしれない。)とのことです。
360頁 上段
力部の「勝」の偏は「舟月(ふなづき)」だった。
362頁 上段
火部の「煮」は点なし。
犬部の「獲」の旁の草冠は横線がつながっている3画のものだった。
363頁 上段
舟部の「艇」には筆押さえがない。(延、廷、建、誕、庭、健には筆押さえがある)
363頁 下段
言部の「謄」の偏は「舟月(ふなづき)」だった。
364頁 下段
馬部の「謄」の偏は「舟月(ふなづき)」だった。
以下も小駒勝美さんのご指摘です。
391頁 5行
「舊」に「★」が抜けています。
391頁 7行
割注「康熙字典も日本の印刷字体の多くも「强」」
康熙字典には「强」「強」の両者が載っていますが主見出しは「強」で、「强」は異体字扱いです。
日本の印刷字体は『明朝体活字字形一覧 上』143ページによれば1、4、10、12の4資料に「強」、あとの19資料に「强」が載っています。
しかし、同書下巻644ページ、646ページをみると7、13、18にも「強」が載っているので、実際には「强」19資料、「強」7資料です。
なお、同書には『康熙字典』『大漢和辞典』の欄にも「强」が載っていますが、実際には両辞典とも「强」「強」の両者が載っていて主見出しは「強」です。
392頁 6行
「月」の正字に「当」をつけるべきです。
当用漢字表にはウロコのある正字が入っています。
396頁 2行
「獎」(下部犬)に「★」がついていますが、常用漢字表でも人名用漢字で
も「奬」(下部大)です。
「奬」(下部大)に「当★人」をつけるべきです。
398頁 3行
「船」にも「沿」「鉛」と同様、「当」をつける字を入れるべきです。
404頁 9行
(冐)が出ていますが、下部を「目」にして「当」をつけるべきです。
当用漢字表は上部の二本の横画の右側にウロコがあります。
407頁 6行
「齢」の「簡」がつけられた字は括弧内に入れ、礼、炉と同じく「当」をつけるべきです。
小駒さん、ご指摘ありがとうございました。
〈井上心葉さんからのご指摘〉(2015/10/11)
いくつか気になった点があるので指摘させていただきます。
p.168-176
「噛」の字種が重複しています。
p.223
「サ」の変体仮名として三つの字形が挙げられていますが、いちばん下のものは1画目を左から右に書いているようです。これは「左」の草書の上部(「さ」の十字の部分)からとったものらしいと、以前本で読んだことがあります。
p.312
@にある予(豫)や余(餘)は、Aに入れてもよいのではないでしょうか。
p.313
礼(禮)はIに入れるべきです。
双も崩し字とは思えません。「漢語林」では『又+又。手ふたつで、ふたつの意味を示す。」と説明されています。
遅(遲)と麦(麥)は楷書の通用体ではないでしょうか。隷書で既に同じ字体があります。真(眞)と同じ関係ではないかと。属(屬)もこれに準ずると思います。
写(寫)は写(冩寫)として、Dに入れていいかもしれません。
p.316
体(體)は、躰の扁を人扁にかえた字が「体(ホン)」と字体衝突した、と考えるべきではないでしょうか。
また、辮は当用漢字で字体を変更されていないので、弁の字を使うのは単なる代用表記だと考えた方がよさそうです。
p.317
「新漢語林」によれば、栃は
『もと杤と書く。明治初年に栃木県の「とち」を栃と書くことに定めてから、栃の字が広まった。さらには傍の(厂万)を(厂萬)の略字とみなして、レイと読むこともある。』
とあります。萬とは本来無関係のようです。
p.318
国(國)は國の草書からできた字かもしれないと、諸橋大漢和字典のHPで説明されていました。
p.319
濱(ヒン)は、簡体字の旁が「宀のしたに兵」になっています。江戸時代の崩し字にもこれによく似た字があるので、これをさらに略したものが「浜」になったのではないでしょうか。
また、「世界の文字の図典 吉川弘文館」には『浜(ハウ・ヒン,bang)はもと濱とは別字であるが、濱の略字として用いられてきた。』とあります。
「新漢語林」でも『〔浜〕舟をひき入れておく水溝。』として、水辺という意味の〔濱〕とは別に説明されています。
p.389
「卸」の括弧内の字形は当用漢字表のものではありません。
p.395
「習」は曜と同じく「羽」の下部を跳ねません。p.406「翌・翼」も同様です。
p.396
「商」の1画目が一になった字形を載せるべきだと思います。
p.399
「瀧」は龍の1画目を一にかえて当をつけるべきです。
また、「致」の旁が夂になった字を載せるべきだと思います。
p.400
「注」は「柱」と同じように、主の1画目が縦になった字を載せるべきです。
当用漢字表は徴も懲も、廳や程と同じように「壬」ではなく「王」になっています。
p.401
「凸」に簡がついています。
「肉」の括弧内の字形は当用漢字表のものです。
p.402
「霸にさんずいをつけた字体」は要らないと思います。
「肺」は、旁の縦棒を1画で書く字体を載せるべきだと思います。
p.407
「麗」の内部にある二つの点は、短い縦線が適切ではないでしょうか。
井上さん、ご指摘ありがとうございました。
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