2014年05月20日

原本を確認!「当用漢字表」の「隠(隱)」

『文字の骨組み』2刷の間違いとご指摘(2014/05/09)の小駒勝美さんからのご教示の内容を確認するため国立公文書館で『官報』に発表された当時の「当用漢字表」と「正誤」の原本を確認してきました。
これまで国立国会図書館所蔵の「当用漢字表」の画像を使っていましたが、不鮮明で困っていました。
国立公文書館では原本を直接さわることができ、しかもデジタルカメラでの撮影可なのです(三脚使用は不可)。

「当用漢字表」は昭和21年(1946年)11月16日の『官報』号外に掲載されました。
「当用漢字表」には131字の新字体が示され、旧字体がカッコで囲まれた形で掲載されました。
戦争直後の物資が少ないせいか、粗悪な紙に小さな活字で印刷されたため、細部がよくわからない字が散見されます。
「当用漢字表」が発表された翌年の昭和22年(1947年)6月9日の『官報』に「正誤」が掲載されました。
「正誤」には「当用漢字表」の「正誤」11字種が載っていました。

140519in-seigo.jpg
昭和22年(1947年)6月9日の『官報』に掲載された「正誤」(国立公文書館所蔵)

これもまた粗悪な紙に小さな活字で印刷されたため、細部がよくわからない字が3字種ありました。
そのうちの1つが「隠」の旧字体「(隱)」なのですが、国立国会図書館の『官報』では〈誤〉がどう誤っているのかがはっきりしませんでした。
ある本では「隱」の旁の上部の「爪」が「ノ+ツ」になっている字体が〈誤〉として載っています。
それで拙著『文字の骨組み』357頁にも「隱」の旁の上部の「爪」が「ノ+ツ」になっている字体を掲載しました。

次の写真が国立公文書館にある「当用漢字表」の原本の「(隱)」部分を接写したものです。
小駒さんのおっしゃるとおり、鉛筆で「ゴシクスに非ず」という書き込みがあります。

140519in-kakikomi.jpg
鉛筆で「ゴシクスに非ず」という書き込みがある(国立公文書館所蔵)

次の写真は左から「当用漢字表」の「(隱)」、「正誤」の〈誤〉の「(隱)」、「正誤」の〈正〉の「(隱)」です。

140519in.jpg
左から「当用漢字表」の「(隱)」、「正誤」の〈誤〉の「(隱)」、「正誤」の〈正〉の「(隱)」(国立公文書館所蔵)

やはり「当用漢字表」の「(隱)」、「正誤」の〈誤〉の「(隱)」はゴシック体のようです。
つまり「当用漢字表」の「(隱)」の誤りは、字体の誤りではなく、書体の誤りだったのです。

小駒勝美さん、ご教示感謝します。
posted by トナン at 00:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック