2017年11月28日

康煕字典の「吉」と「天」について

「吉」について、上の横線が長い「士吉(さむらいよし)」と、下の横線が長い「土吉「つちよし)」があるのはなぜか、ときかれると、いままで次のように説明してきた。

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「士吉(さむらいよし)」と「土吉「つちよし)」は同じ字種で、隷書や楷書などは「土吉「つちよし)」が多く、明朝体などの印刷用の文字は「士吉(さむらいよし)」なのです。その理由としては次の二つが考えられる。

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(1)世界初の漢字字典である『説文解字』の篆書の親文字(説文篆文)が、「士吉(さむらいよし)」なので、唐時代の正字体楷書は「士吉(さむらいよし)」にした。「正字体」というのは説文篆文に合致した字体のこと。『康煕字典』も『説文解字』の篆書に倣って「士吉(さむらいよし)」にした。『康煕字典』の親文字は明朝体で、印刷字体はそれに倣って「士吉(さむらいよし)」にした。

(2)隷書や楷書は「土吉「つちよし)」の方がバランスがとりやすく、格好がよいので「土吉「つちよし)」。明朝体は「士吉(さむらいよし)」の方が格好がよいので「士吉(さむらいよし)」にした。

では「天」はどうだろうか。

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説文篆文の「天」に倣えば上の横線が短く、下の横線が長くなるはず。実際、唐時代の正字体は上の横線を短くしている。ところが『康煕字典』の親文字は説文篆文に従わず、上の横線を長く、下の横線を短くしている。

これでは「吉」の(1)のと同じ理由が使えない。もしかしたら「吉」も説文篆文に従ったのではなく単に明朝体には「士吉(さむらいよし)」の方が格好がよいからという理由で「士吉(さむらいよし)」にしたのかもしれない。

ところで「当用漢字表」や「当用漢字字体表」は印刷の字体と手書きの字体を統合したのだが、印刷の字体にも手書きの字体を採用した、と理解していたのだが、「吉」や「天」は印刷の字体を採用している。これはどうしてだろうか。
posted by トナン at 18:00| Comment(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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