2019年04月23日

「令」の印刷文字と手書き文字の字体について

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新元号「令和」が2019年4月1日に発表されました。
発表時、菅官房長官が掲げた「令和」と書かれた書の「令」の字に違和感を持ったのはわたしだけではないでしょう。
そこで「令」の字体についてまとめてみることにしました。

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上の表は古代から現在までの「令」の代表的な字体を示そうとして選んだ字形です。

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上の5例は内閣や省庁が告示や発表、使用している代表的な文字です。
左から「当用漢字表」「当用漢字字体表」「学習指導要領」「常用漢字表」「元号発表時」の字形です。

「字形」とした理由は、「字体」は「文字の骨組みの概念」なので目に見えないからです。
「字体」を字体の説明のために書けば「字形」ということになります。
概念というのは野球のストライクゾーンのようなものです。
サッカーのゴールは実物ですから見えますが、野球のストライクゾーンは概念なので目に見えません。

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「当用漢字表」は1946年(昭和21年)11月5日に国語審議会が答申し、 同年11月16日に内閣告示されました。
当時使われていた明朝体活字で印刷され、略字のある活字は積極的に略字が使われています。

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「当用漢字字体表」は1949年(昭和24年)4月28日に内閣告示されたもので、版下はどなたかが手書きで書いたものらしいです。
「令」の3画目は横線で、4画目は折れた(転折)後、真下ではなくやや左下に向かって書かれ、その後、左上にはねています。

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「小学校学習指導要領」の「国語」に「別表」として示されている「学年別漢字配当表」にある字形です。
「令」の3画目は点で、4画目は「フ」の形、5画目は点です。

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「常用漢字表」は「当用漢字表」「当用漢字字体表」にかわって、1981年(昭和56年)3月23日に国語審議会が答申し、同年10月1日に昭和56年内閣告示第1号として告示されました。
その後、2010年(平成22年)6月7日に文化審議会が改定常用漢字表として答申し、同年11月30日に平成22年内閣告示第2号として告示され現在に至っています。

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「常用漢字表」の書体は明朝体で、字体も明朝体のものですが、明朝体の特徴である「筆抑え」を省いた字形です。

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「常用漢字表」の前文には「書写の楷書ではいろいろな書き方があるもの」として「令」の用例が2例載っています。

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「常用漢字表」の前文の考え方を詳しく説明した「常用漢字表の字体・字形に関する指針」(文化審議会国語分科会 平成28年)の「字形比較表」には「手書き文字の字形の例」として「令」の用例が3例載っており「など」と用例が3例にとどまらないことを示唆しています。実はこの表に複数の例を載せ、「など」と加えるようにしたのは、わたし(大熊肇)の要望が採用されたものです。

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新元号発表時に示された字体は、「常用漢字表の字体・字形に関する指針」の「手書き文字の字形の例」の3例のいずれにも該当しない字体です。

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上の図は、「令」の3画目(A-1からA-2)、4画目(B-1からB-3)、5画目の字体(C-1からC-2)の字体部品のバリエーションを示したものです。

〈A-1〉は3画目を点ではなく横線を書くもので、次のような用例があります。

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楷書の極則といわれる九成宮醴泉銘の「令」の3画目が点ではなく横線なのは意外な気がします。
※上の図の「学区図書」は「学校図書」の誤りです。(2019.04.23訂正)

〈A-2〉は3画目に点を書くもので、次のような用例があります。

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手書き文字の多数が点を書きます。
大阪書籍「改定 小学国語 六年 下」1957年は「令和」の元号発表時の字と同じ字体です。

〈A-2-2〉は3画目に点を書きますが点が4画目の横線に接する例で、次のような用例があります。

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〈B-1〉は4画目を転折の後、ほぼ垂直に書き、左上にはねるものです。

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印刷用の明朝体の字体といえるでしょう。

〈B-2〉は4画目を転折の後、左下に向かって書き、終筆ははねません。

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手書きのほとんどがこのタイプです。

〈B-3〉は4画目を転折の後、やや左下に向かって書き、終筆をはねる例です。

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明朝体の字体を手書きしようとするとこうなるようです。

〈C-1〉は5画目を縦線にし、終筆を止める例です。

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長いものも短いものもありますが、字体としては区別しません。
終筆を止めるか払うかは明朝体では区別できませんし、字体の範疇ではなく、書体の範疇だろうとおもいます。
終筆を「止める」とか「払う」というのは篆書にはなく、隷書以降にできたようです。
※上の図の「学区図書」は「学校図書」の誤りです。(2019.04.23訂正)

〈C-2〉は5画目に点を書く例です。

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行書、楷書に圧倒的に多い例です。

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〈手書きの字体〉
字体の差は計算上は「2×3×2=12」で12種類ありますが、×を付けたものは通常は手書きでは書かないので、手書きの字体は「2×1×2=4」で4種類ということになります。

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実例をあげると上の4つですが、3画目が横線で5画目が点という組み合わせはレアな組み合わせです。

〈印刷の字体(明朝体)〉
明朝体の字体は1つだけだろうとおもいます。

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明朝体の字体を手書きで書くと、奇妙な字ができあがります。
posted by トナン at 17:29| Comment(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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