2007年12月27日

【補足】「斎藤」さんと「斉藤」さん

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『組版/タイポグラフィの廻廊』(白順社)に次のように書いた。

―― 「サイトウさんのサイはどんな字ですか?」と聞くと「難しい方のサイです」などといわれて困ることがある。どうもサイトウさん本人もよくわかっていないらしい。「斉」と「斎」は違う字種だ。「斉」は「セイ」と読む字。「そろう・ひとしい」と訓じる。「斉」は当用漢字にはなく、常用漢字で追加された字だ。「斉藤」を「サイトウ」と読むのは慣用読み。「斎」は「サイ」と読む字で、「ものいみ・つつしむ」と訓じる。斎場とは書くが斉場とは書かない。
 「斉」は「齊」の略字で、「斎」は「齋」の略字だ。この略字は中国では書かれていなくて、伝統的な字体と正字にも字体の差がない。日本に伝わった頃にも書かれていない。どうも平安時代に書かれ始めたらしい。江戸になると書き順を変えて書かれるようになり、「斉」と「斎」の区別がほとんどなくなる。これがこれらの字を混同するようになった原因だとおもう。江戸では行書よりさらにくずす字体があるが、中国の草書とはまったく違うくずしかただ。
 「斉」について、藤堂明保は「◇印」、加藤常賢は「穀物の穂先」、白川静は「巫女の簪を三本まとめた形」としている。「斎」は会意や会意形声などの解釈の相違はあるが三者とも「斉+示」としており、「示」についても三者とも「神に祈るための机」で同意見。――

ところが最近読んだ、金谷武洋『日本語文法の謎を解く――「ある」日本語と「する」日本語』(ちくま新書)に次のようにあるのをみつけた。

――中には「(官職)の藤原」起源の苗字もある。「斎宮頭の藤原」から「斎藤(斉藤)」――

つまりもともとは「齋藤」らしいのだ。「斎」は平安時代に書かれだした「齋」の略字である。それが江戸時代にさらに略され、別字の「斉」と字体が衝突したのだ。
「斉藤」の「斉」は、「齊」の略字ではなく「齋」の略字だと思われる。
posted by トナン at 15:35| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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