2008年03月14日

字体変遷字典(一壱逸稲芋印員因)

080314-10.jpg

【一(弌)】「弌」は説文にも康煕字典にも「一」の古文として載っている。それとは別に康煕字典では「弋」の一画からも引くことができる。
【壱(壹)】「壱」は「壹」の行書や草書からできた略字だ。「壱」の字体は説文にも康煕字典にも載っていない。中国常用よりも日本の常用字の方が簡化されている例だ。説文では中に「𠮷」がある。しかも「さむらいよし」ではなく「つちよし」だ。隷書肉筆には表に載せた「亜」を含む字体の他に上記のように「且」を含む字体もある。隷書石碑だと「亜」とも「豆」とも違う不思議な字体になる。
【逸(逸)】字源的にはこの字の旁は「免」ではなく「兔うさぎ」。説文、正字、康煕字典など正字の系統は旁に「兔」を書く。伝統的な字体では「兔」の点を省いて書き、すでに隷書の段階で点を失っている。文部省活字は「兔」ではなく「免」に点をつけた字体。当用漢字と常用漢字は「免」。中国常用は「兔」。正字では点ではなく横線になっている。江戸では点のある字もある。康煕字典のしんにょうは二点。
【稲(稻)】「臼」のパーツを「旧」に書くわけだが、単体の「臼」はそのまま書く。「旧」は「舊・𦾔」の略字。
「のぎへん」の縦線は伝統的にハネる。教科書体ではハネていないが常用漢字表にあるようにハネてもハネなくても良い。教師はハネた「のぎへん」を不正解にしないように注意!
【芋】中国でも日本でもあまり使用例がない字。漢字を書くような特権階級はこの字を書くような文を書かなかったのだろう。江戸になると使用例が増えるのは庶民が字を読み書きするようになったせいだとおもう。現在の中国では「薯」を書く。「芋」は長イモ、「薯」は丸っこいイモのことだそうだ。そういえば馬鈴薯は「薯」を書く。
【印】平安と江戸ではなし点がつくことが多い。江戸に載せた字形は知らないと読めないかもしれない。
【員】字源は説文では貝に従う字としているが、加藤常賢も白川静も鼎に従う字としている。白川静によれば「口」は鼎を上から見た形で口の丸い鼎をあらわしている。円(圓)が丸をあらわすのはそのためだ。伝統的字体では「口」を「△」または「ム」で書く。太宗皇帝でさえ正字の字体は書いていない。
【因】泰山刻石と比べると説文の字体は小篆というより金文に近い。こういうのが説文をもうひとつ信じ切れないところだ。もっとも説文の原本はないのだけれど。四角で囲まれた中の「大」の右払いは少しでも書道をやった人から見ればありえない書き方だ。中国常用では止めている。四角の中の「大」はどうも格好が悪くていろいろ工夫したのだろう。「大」を一八〇度開脚したものが「土」になり、それが「工、ユ、コ」に変化したのだろう。

080314-11.jpg

080314-10-11.pdf
posted by トナン at 12:50| 埼玉 🌁| Comment(0) | TrackBack(1) | 字体変遷字典(大熊肇試作) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/89544959
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック

寄席文字字典
Excerpt: 寄席文字字典 僕ら寄席文字をやる人には必需品です。 何度もお世話になってます。 夜遅くまで苦楽を共にしている本です。
Weblog: もぼなもな書房
Tracked: 2009-09-09 18:42