

【釈文】
熊の来て 牛たたかひし 霞哉
「霞哉」がむずかしい。高浜虚子の評釈を見る
る君の趣味の臨機に●露する才力に感謝の意を致さんとする迄である。
四十三年二月
夏目漱石
ずつと単簡に願いたいなと、我●●らず遠い昔を回●することがある。其時へいと云ってすぐ●てくれるものは俳画である。余は俳画を見る度に単純な昔に返り得た様な心持がする。さ●して其願に云ふべからざる一種のなつかしみを感ずる。かなり読めないところがあります。
不折君の技倆に就ては今更●●する●必要がないからわざと略した。ただ不折君が●の大作を●表する余●に散な商品を公けせらるるの労を多とするのみならず、多種多様な
有せねばならぬと思ふ。ここが西洋のスケッチとは違ふ所以である。スケッチは本来が大作の用意として他日の材料に書き溜めるものの様に思はれるが俳画はさうではない。それ自身に於て完全したようである。是より以上精密にする事も複雑にすることも不必要な所が身上になる。吾々文明人の生活は日にまし●●によって●●のは催しも気の付く事であるが●●に複雑な文明の潮流に浴して流されてゐるうちに、何だ面倒だもう
矛盾を一度に見●すから可笑しいのである。だから俳画とカリカチュアを一所にするのは茶●と仙人を一つ縄で束ねる様なもので当を(得)ない。●のところが読めません。どなたかご教示ください。
俳画はあらゆる画のうちで尤も省略法に富んだものである。だから其特長は無理がなく無難●に省略された所にある。簡易生活を理想とした一部の日本人のうちに俳画的要素を含んでいるのは当(然)である。その日本人の中でことに簡易生活を喜ぶ坊主俳人の類は無論描写法にも俳画的表現を
はどうでも好いが比グロテスクと云ふ趣味を尤も鮮明確的に●●しているものは俳画である。不折俳画を一見すれば誰でも余が説を否定するものはあるまい。
比グロテスクと云ふ趣味をカリカチュアから(得)る面白味と混同しては全く興がない。グロテスクではとぼけた●が真面目にそれ自信に●て價値を●成しているがカリカチュアに●ると本来の面目を●張して変化せしめた点、即ち彼我を比較して其●に調私と
夫は何故だか一寸分らないが欧洲の様な男振りの好い国柄では器量人ばかり眼につきから、変●な羅漢や仙人の顔付のうちで風雅な奴を選択する程の趣味を養求しにくかつたのだらう。幸にして我々は不思議な位とぼけた面相を揃へて生活しているので、長い間には何●か比とぼけたうちに一種の趣味を●見すべく余儀なくされた●を西洋人に見付かつて、ついにグロテスクと云ふ名を頂戴して仕舞つたのぢやなからうか。それ
不折俳画の序
不折俳画法には●物が多かったが今度のには人物が過(成)をためている。考へると俳画の人物程妙に出来上がってるものはない。●々女に好かれないのを以て特色と心得てる顔ばかりである。グロテスクと云ふ言葉があって美と区別するが元来比グロテスクなる言葉が西洋語であるに拘はらず共趣味は決して西洋的でない。大抵は日本支那印度の美術品に限って使はれてる様に思ふ。
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