2013年07月20日

点3つが口2つに……それは勘違いです


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「口」をくずすと平仮名の「い」みたいに点が2つになります。
「口」が二つ並んでいるのをくずすと点が4つではなく、点3つになります。
ですから「品」をくずすと上に点が2つ、下に点が3つの字体になります(上の点が1つになることもある)。
「侃」の旁が「品」になっている異体字があります。
この字体は干禄字書で〈俗〉になっています。
これは「侃」の旁の下部の点3つを「口」2つをくずしたものと間違えて旁が「品」になったのでしょう。
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2013年07月19日

「余」と「餘」は本来は別の字


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「余」と「餘」は本来は別の字ですが通用します。
通用しているのに漱石が両方の字体を書いているのには驚きました。
使用例は「持て余している」、「餘り気の毒だから」、「汽車が余っ程動き出して」、「学資の餘りを」、「余っ程上等だ」、「余計な手数だ」、「余計な減らず口」、「年中持て余して」、「餘り上品ぢやないが」、「餘っ程えらく」、「余っ程辛防強い」、「蚊が餘っ程刺した」、「余計な発議」……さて漱石は「余」と「餘」を使い分けているのでしょうか。使い分けているとしたら使い分けの基準はあるのでしょうか。ただなんとなく両方使っているようにも見えますが。

   
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2013年03月01日

大熊肇の組版道場(第3期)

「文字の学校」主催「大熊肇の組版道場(第3期)」を開講する予定です。
下記サイトからお申し込みください。
http://moji.gr.jp/gakkou/kouza/kumihandoujou/

少人数でワークショップをしたいのですが、あまりにも少人数すぎると中止になります。
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2013年02月12日

『康煕字典』原刻本の版木の疵について

野崎邦臣著『漢字字形の問題点』(天来書院)が届きました。
たいへんな労作です。頭が下がります。

まず驚いたのは、筆者の野崎邦臣さんは、東京大学の東洋文化研究所附属図書館蔵の康煕字典の内府本(東大本)が本当に原刻本かどうか、北京図書館(現在は中国国家図書館)まで行って照合して、間違いなく原刻本だと確認したということです。
その証拠として、刀部の「刳」にある版木の疵をあげています。

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それではわれらが書香文庫・境田稔信さんが蔵する康煕字典はどうなのか?

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書香文庫本

同じように疵がありました。あ〜良かった。

  
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2012年03月21日

「さいとう」さんは日本で10番目に多い苗字

「苗字舘」の「全国苗字ランキング」によると「さいとう」の順位と件数は次のようになっています。

藤 17位 137475件
藤 45位 73185件
藤 340位 14744件
藤 694位 6687件

4種類の「さいとう」さんがバラバラに集計されているのです。

以前、「【補足】「斎藤」さんと「斉藤」さん」や「【補足2】「斎藤」さんと「斉藤」さん」に書いたように

「さいとう」の「さい」は本来は「」で、その略字が「」、江戸時代になると「」のように略されます。
つまり江戸時代の手書きで書かれた「藤」は「藤」の略字であって、「」の略字の「」ではないとおもうのです。
それが「」の略字と間違えられて「藤」ができたとボクは考えます。
「全国苗字ランキング」では「藤」は694位で6687件と他の3つの「さいとう」とは件数の桁が違います。
件数からも「藤」は間違い説の状況証拠のひとつになるとおもいます。

ところで4種類の「さいとう」をまとめると232091件になり
9位の小林(241651件)と10位の加藤(203101件)の間に入ります。
「さいとう」さんは実質は日本で10番目に多い苗字なのです。
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2012年01月24日

仮名で見分ける活字ガイド


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アイデア編集部編『もじのみほん 仮名で見分けるフォントガイド』誠文堂新光社を買いました。
とても良い本ですが、これに載っているのは現在発売されているデジタルフォントだけで、金属活字や写植は調べられません。

ボクが作った「仮名で見分ける活字ガイド」のPDFをアップします。
主な本文用の金属活字、写植などの特徴的なひらがなをまとめたものです。
金属活字のひらがなは原寸で載せています。
これは「組版道場」で配布している資料です。

〈追記2012/01/25〉
下記のPDFデータを修正(「*」印を「晃文堂系」と訂正)しました。

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2012年01月01日

恭賀新年


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ことしはどうしても「おめでとう」と書く気持ちにならず、「無事」というハンコをつくって捺しました。
どうぞみなさま、今年一年無事でありますように。

壬辰正月 圖南・大熊肇
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2011年12月26日

ボクの名前は「肇」でいいですよ


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ボクの名刺はこんなのなんですが、これを見て郵便に一所懸命「」と書いて送ってくださる方がいらっしゃいます。
ごめんなさい。ふつうに「肇」でいいです。

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金文にはもともと「肇」「肈」の両方の系統があるようです。
金文には「聿」のないものや「攴」や「戈」のないものもあります。
説文解字には「攴」部に「肇」が、「戈」部に「肈」が載っています。
康煕字典では「聿」部に「肇」「肈」の両方がまとめられています。
「攴」は隷変で「攵」になる。「攵」はさらに(誤って?)略されて「又」になることがあります。また、「戸」を「石」のように書くこともあります。
干禄字書も五経文字も「肈」を〈正〉としています。
干禄字書は上部を「石+又」としたものを〈通〉としています。
五経文字は「肇」を〈訛〉としています。

以上をまとめると
1)金文〜隷書までは「肇」「肈」の両方の字体が共存していた。
2)南北朝期〜清まで「肈」が優勢。
3)唐代の正字は「肈」を正字とした。
4)康煕字典では「肇」が親字で「肈」を同字として「聿」部にまとめられている。
5)日本では使用例がほとんどなく、明治以降「肇」の字体が使われる。これは日本書紀に「肇國」という語があるためらしい。

ここまで書いたところでHNGに「肇」の使用例を発見(『教行信証』)。

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2011年12月07日

号数サイズの変遷とルビ


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日本の号数活字のサイズです。
なぜか四号の半分のサイズがありません。

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アメリカンポイントが決まったのが1886年ですから、美華書館の活字をアメリカンポイントで換算するのはあまり意味がないとおもいます。
美華書館から輸入した号数活字は日本でサイズを整えられました。
昭和2年に、築地活版の宮崎榮太郎がはじめて築地活版の号数活字をアメリカンポイント換算で何ポイントになるか発表します(板倉雅宣『号数活字サイズの謎』Vinette 12 朗文堂より孫引き)。
縦の列は倍数関係がありますが、横は大きさの関係に誤差があります。その誤差をJISが修正したのは昭和37年のことです。


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美華書館のサイズと日本で整えられたサイズの比較です。
美華書館では一号から五号が本文用、六号がルビ専用だったのだとおもいます。

〈日本での変更点〉
1)五号よりも小さい活字(三号の半分)をつくり六号とした。
2)美華書館の六号を七号に名称変更した。
3)六号の活字のルビ用に八号をつくった。
4)二号の2倍のサイズの活字をつくり、初号とした。
5)四号の2倍の大きさになるように一号を大きくした。

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日本の旧サイズと昭和37年のJISサイズの比較です。
まあ、誤差の範囲の微調整ですね。

真ん中の列を1とすると左の列は1.25、右の列は0.75です。
五号を基準に左右の列を見ると、
左側の四号は、1.25倍、一号は2.5倍
右側の六号は、0.75倍、三号は1.5倍

七号をルビ専用とすると、七号は
初号の8分の1
一号の5分の1
二号の4分の1
三号の3分の1
四号の2.5分の1
五号の2分の1
になります。

4号の半分のサイズがないのは、ルビとしては大きすぎるからだろうとおもいます。
現在の組版でも12ポイント以上の本文に6ポイント以上のルビを使うと大きすぎるので、2分よりも小さなルビを使いますよね。

四号に七号のルビを使った組版では、2字の熟語に5字のルビがぴったり入ります。
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2011年11月21日

「処」は「處」の略字じゃないよ


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「処」は「處」の略字ではなく、紀元前からある異体字。

金文の字体を見ると「処」の左側は「人」のようだ。

「処」「處」それぞれに正字体と通用体がある。
馬王堆の字体が「処」の通用体。
五経文字で〈俗〉としている字体が「處」の通用体。

漱石は「処」「處」両方の字体を使うが、「処」は「ところ」と訓読みする場合1度だけ。音読み及び熟語の場合は「處」を使う。
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2011年11月10日

【「涼」と「凉」】


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「涼」と「凉」は異体字として扱われている。
説文篆文では偏が「水」だから、干禄字書(拓本版は摩滅していて見えないので江戸版本を参照)は「涼」を〈正〉とし、「冫+亰」を〈俗〉としている。「凉」は載っていない。五経文字に「冫は訛」とある。
中国では古くは「氵」が書かれていたが、唐代末(懐素の頃)以降は「冫」が多くなる。
我が国には「氵」と「冫」の両方が入ってきたようだ。
平安時代になっても藤原行成は「氵」と「冫」の両方を書いている。
弘道軒に「涼」と「凉」の両方があるが、「涼」は「凉」よりもあきらかに出来が悪いので、ひょっとしたら後から追加されたものかもしれない。
驚いたことに文部省活字にも「涼」「凉」の両方がある。
漱石も太宰も手書き原稿では「凉」を書いているが、印刷本では「涼」にかえられている。
「京」は通用体では「亰」と書かれることが多い。
「亠」を「𠂉」とする字体があるが、草書の影響かもしれない。
現代中国では「凉」に統一され「涼」はない。
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2011年10月31日

「凍」の偏は「冫」か「氵」か?


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説文篆文では「冫」だが漢代の武威漢簡、北魏の唐雲墓誌は「氵」に従っている。

干禄字書は「氵」を〈正〉とし、「冫」を〈俗〉としている。
干禄字書の著者・顔元孫はもちろん説文篆文を見ているはずで、それでもあえて説文篆文の字体を〈俗〉としているのです。

九経字様では説文篆文に従って「冫」の字体を載せている。
これは、干禄字書の訂正という意味なのかも。

我が国では「冫」に従った字体が標準。
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2011年10月26日

「⺈」の左払いと「厂」のタレが合体して「亻」になっちゃた


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【侯】古代の字は「⼚+矢」で「⺈」は後に加わる。「⺈」の左ハライと「⼚」のタレ(縦線)が合わさって「亻(ニンベン)」になる。「矦」が正字体で、「矦」の「矢」が「夫」になった字体が通用体。康煕字典の親字になっている字体は、中国の清代、日本の江戸時代あたりにできた俗字だろう。『陸軍幼年学校用字便覧』では「矦」を〈本字〉としている。

【候】元は「亻+矦」。「矦」が「侯」になるのだから「亻+侯」になるはずだが、さすがに「亻」が2つ重なるのは格好が悪かったのか、2つ目の「亻」は「h」に略されている。
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2011年10月25日

古代、「七」は「十」と書いていた


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甲骨文の時代は「七」は「十」の字体だった。一方、「十」は「h」だったが、金文の頃に中央がふくらみ、秦でそのふくらみが横線になり「十」になる。ここで「七」と「十」の字体が衝突する。
睡虎地秦簡では横線が長い十が「七」、縦線が長い十が「十」というあやふやな字体差で区別している。
居延漢簡では「七」が「十」の字体のものと、縦線の下部を右に曲げて「七」の字体にしたものが出現。後漢の曹全碑はそれに倣っている。
乙瑛碑は「七」も「十」も「十」の字体だが、「七」の横線に磔(右払い)をつけ、「十」の横線には磔をつけないことによってちょっと苦しい区別をしている。
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2011年10月02日

「大熊肇の組版道場」第2期 参加者募集

第1期は10名の参加者があり、好評でした。
第2期の参加者を募集しています。
8名以上集まったら開催します。
http://moji.gr.jp/gakkou/kouza/kumihandoujou/
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2011年08月06日

「木+成」と書く「森」の異体字


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江戸時代は「木+成」と書きますね(江戸時代の「成」は上の横線を省略します)。
なぜこんな字体になったか考えてみますと、草書で下部の「林」を縦・縦・横・左払い・右払いという風に書いたのを「成」と誤ったのだろうとおもいます。

木が成って森になるという会意的な洒落になっているのかもしれません。

下部を点4つにした字体からできたのではないかとも考えてみたのですが、ちょっと無理っぽいです。
その理由の1は、画が増えちゃうからです。
理由の2は時期の問題です。点4つにした字体がよほど前からあって、「木+成」が後からできたのなら可能性がありますが、どちらもほぼ同時期にできた異体字らしいからです。

『異体字解読字典』(柏書房)にある字体は、「木+成」をさらに略しています。

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『古文書解読字典』(柏書房)には「木+成」が異体字として載っています。
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2011年07月05日

『学問ノスヽメ六編 全』(明治七年二月)


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義父の蔵書にこんなのがありました。
『歴史の文字 記載・活字・活版』府川充男「『学問のすゝめ』と『学問ノスヽメ』の活字各種について」
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/publish_db/1996Moji/05/5700.html
に「六編−−−同年二月(活版と整版の二種類の版本がある)」とありますが、これは活版でしょうか。
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2011年05月30日

左右に伸ばす線:「華」


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まともな字体の「華(上の隷書)」をみつけた。
下の行書だか隷書だかわからない方はだめ。

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「華」は下から2番目の横線を左右に伸ばす。
ただし、一番下の線を省略することもある。
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2011年05月06日

稲荷山鉄剣銘の「宮」


昨日、行田の「さきたま史跡の博物館」で稲荷山鉄剣銘を見てきました。

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これが鉄剣銘の「宮」です。
前から気になっていたんですが、ウカンムリを除いた部分は「呂」でしょうか、「口」が2つでしょうか。
実物を見てもよくわかりませんでした。

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博物館でいただいた「見学のしおり」の解読では「呂」になってます。
「口」と「口」をつなげる線をこんなに右の方に書くでしょうか。

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北川博邦編『日本上代 金石文字典』雄山閣出版の「宮」の項です。
稲荷山鉄剣銘の「宮」は微妙ですが、他の例はすべて「口」が2つであって「呂」ではありません。
posted by トナン at 17:27| Comment(2) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

よく似たフォント(1)


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上の2つは、矢作勝美著『明朝活字 その歴史と現状』174〜175頁から抜き出したものです。
大きく形が違うのは「た」「な」の2文字で、わずかに違うのは「り」「わ」の2文字です。
ところが1冊の中で2種類の「な」が混ざっている出版物もあります。
ということは研究社と第一印刷出版の活字の差ではなくて、バージョンの違いなのかもしれません。
第一印刷出版の仮名と本明朝の仮名はとても良く似ています。
明確に違うのは「り」「を」の2文字です。
間違えないように気をつけようと思います。
posted by トナン at 16:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする