2023年08月22日

夏目漱石の文字遣い 『こころ』手書き原稿065

夏目漱石の『こころ』の手書き原稿の復刻版(岩波書店)を手に入れて、字体を検証しているところなのですが、漱石独特の文字遣いも興味深いので、気がついたものをアップします。
※仮名遣いは現代仮名遣いにします。

こころ065.jpg

◎「座」と「坐」の使い分け

「座敷で」

こころ065-1.jpg


「坐して」

こころ065-2.jpg

「座」と「坐」を明確に使い分けている。
posted by トナン at 17:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夏目漱石の文字遣い 『こころ』手書き原稿063

夏目漱石の『こころ』の手書き原稿の復刻版(岩波書店)を手に入れて、字体を検証しているところなのですが、漱石独特の文字遣いも興味深いので、気がついたものをアップします。
※仮名遣いは現代仮名遣いにします。

こころ063.jpg

「蒼蠅い」

こころ063-1.jpg

現代は「五月蝿い」と書くことはあるが、漱石は「蒼蠅い」と書く。
posted by トナン at 15:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夏目漱石の文字遣い 『こころ』手書き原稿062

夏目漱石の『こころ』の手書き原稿の復刻版(岩波書店)を手に入れて、字体を検証しているところなのですが、漱石独特の文字遣いも興味深いので、気がついたものをアップします。
※仮名遣いは現代仮名遣いにします。

こころ062.jpg

「左右は」

こころ062-1.jpg

現代なら「そうは行かない」とするところを「左右は行かない」と書き、「左右」に旧仮名遣いの「さう」とルビを振っている。

「丸で」

こころ062-2.jpg

「まるで」を「丸で」と」している。
「丸で」はこの原稿にはじめて出てきたのではなく、前の原稿にも頻出している。
posted by トナン at 15:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夏目漱石の文字遣い 『こころ』手書き原稿043

夏目漱石の『こころ』の手書き原稿の復刻版(岩波書店)を手に入れて、字体を検証しているところなのですが、漱石独特の文字遣いも興味深いので、気がついたものをアップします。
※仮名遣いは現代仮名遣いにします。

こころ043.jpg

「入ろう」

こころ043-1.jpg

「入(い)ろう」とルビを振っている。
※「はいろう」と読ませたいときは「這入ろう」と書く。
posted by トナン at 13:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年08月20日

夏目漱石の文字遣い 『こころ』手書き原稿014

夏目漱石の『こころ』の手書き原稿の復刻版(岩波書店)を手に入れて、字体を検証しているところなのですが、漱石独特の文字遣いも興味深いので、気がついたものをアップします。
※仮名遣いは現代仮名遣いにします。

こころ014.jpg

「腰を卸して」

こころ014-1.jpg

現代なら「腰を下ろして」と書くものを「腰を卸して」としている。
posted by トナン at 17:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夏目漱石の文字遣い 『こころ』手書き原稿013

夏目漱石の『こころ』の手書き原稿の復刻版(岩波書店)を手に入れて、字体を検証しているところなのですが、漱石独特の文字遣いも興味深いので、気がついたものをアップします。
※仮名遣いは現代仮名遣いにします。

こころ13.jpg

「夫から」

こころ013-1.jpg

「それから」を「夫から」としている。
漱石は「それ」と書く場合と「夫」と書く場合があり統一されていない。


「迠」

こころ013-1.jpg

「迠」を「迄」の異体字として使っている。
なお、活字では二点しんにょうの字体しかないが、漱石は点を省略したり一点しんにょうにしている。
posted by トナン at 17:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夏目漱石の文字遣い 『こころ』手書き原稿011

夏目漱石の『こころ』の手書き原稿の復刻版(岩波書店)を手に入れて、字体を検証しているところなのですが、漱石独特の文字遣いも興味深いので、気がついたものをアップします。
※仮名遣いは現代仮名遣いにします。

こころ011.jpg

「隠し勝」

こころ011-1.jpg

現代なら「隠しがち」とするところを「隠し勝」としている。

「護謨製の頭巾」

こころ011-2.jpg

「ゴム」を「護謨」としている。
posted by トナン at 16:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夏目漱石の文字遣い 『こころ』手書き原稿006

こころ006.jpg

夏目漱石の『こころ』の手書き原稿の復刻版(岩波書店)を手に入れて、字体を検証しているところなのですが、漱石独特の文字遣いも興味深いので、気がついたものをアップします。
※仮名遣いは現代仮名遣いにします。


「這入りに」

こころ006-1.jpg

現代なら「入りに」とするところを「這入りに」としている。

「有たない」

こころ006-2.jpg

現代なら「持たない」と書くところを「有たない」とし、ルビを振っている。


「斯ういう」

こころ006-3.jpg

現代なら「こういう」と書くところを「斯ういう」としている。
posted by トナン at 16:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夏目漱石の文字遣い 『こころ』手書き原稿005

こころ005.jpg

夏目漱石の『こころ』の手書き原稿の復刻版(岩波書店)を手に入れて、字体を検証しているところなのですが、漱石独特の文字遣いも興味深いので、気がついたものをアップします。


「其所此所」

こころ005-1.jpg

現代なら「そこここ」または「其処此処(其處此處)」と書くところを「其所此所」としている。
posted by トナン at 16:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夏目漱石の文字遣い 『こころ』手書き原稿002

こころ002.jpg

夏目漱石の『こころ』の手書き原稿の復刻版(岩波書店)を手に入れて、字体を検証しているところなのですが、漱石独特の文字遣いも興味深いので、気がついたものをアップします。


「端書」

こころ002-1.jpg

現代なら「葉書」と表記するところを漱石は「端書」と書き、ルビを振っている。


「所が」

こころ002-2.jpg

現代なら「ところが」と書くところを「所が」としている。
posted by トナン at 15:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夏目漱石の文字遣い 『こころ』手書き原稿001

夏目漱石の『こころ』の手書き原稿の復刻版(岩波書店)を手に入れて、字体を検証しているところなのですが、漱石独特の文字遣いも興味深いので、気がついたものをアップします。

こころ001.jpg


「其」

こころ001-1.jpg

現代なら「その」とひらがなで表記するところを漱石は「其」と書く。


「此所」

こころ001-2.jpg

現代なら「ここ」と表記するところ。もし漢字で書くなら「此処」または旧字体で「此處」とするが、漱石は「此所」と書き、しかもルビを振る。


「丈」

こころ001-3.jpg

現代なら「だけ」とひらがなで書くところを、漱石は「丈」と漢字を書く。


「是」

こころ001-4.jpg

現代なら「これ」とひらがなで書くところを、漱石は「是」と書く。
posted by トナン at 12:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年04月14日

字体変遷字典 【戈】戟戦戯戴【戸】戸

jitai342-343.jpg

【戴】2004年9月27日に人名用漢字になり、2010年11月30日に常用漢字になった。
【戸】五経文字の字体が説文解字と一致しない。
posted by トナン at 17:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年03月07日

字体変遷字典 【戈】成我戒或戚

jitai340-341.jpg

【成】康煕字典と当用漢字表では「成」。江戸期は2画目の横線を省略することが多い。

【戚】2004年に人名用漢字になり2010年に常用漢字になった字。
posted by トナン at 18:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年08月09日

文部省『筆順指導の手びき』の広告

友人から『筆順指導の手びき』をいただいた。
お父さんの蔵書だったらしい。

本自体も貴重だが、本に挟まっていた広告がまた貴重だ。

筆順指導の手びき・広告.JPG

以下が広告の全文。

--------------------
全生徒、全学生、全教育者に贈る
初中等教育課 沖山光 担当
筆順指導の手びき
A5判 一二〇頁
定価 三五円
送料 一〇円
昭和二十三年当用漢字字体が発表されて以来、その筆順については必ずしも統一されていなかった。此の指導上の不統一を解決する為めに斯界の学識経験者、大学教授、指導主事、現職校長先生による協議の結果得たる案にもとづき、文部省が贈る筆順統一の決定版。
--------------------

この広告でわかるのは、
1)担当者が初中等教育課の沖山光という人だということ。本の中には担当者の名前は書かれていない。
2)「筆順については必ずしも統一されていなかった」「文部省が贈る筆順統一の決定版」と筆順を統一したとされていること。これは「まえがき」にも書かれていいる。「1. 本書のねらい」には「もちろん,本書に示される筆順は,学習指導上に混乱を来たさないようにとの配慮から定められたものであって,そのことは,ここに取りあげなかった筆順についても,これを誤りとするものではなく,また否定しようとするものでもない」と書いているが、本心は筆順を「統一」したかったのだろう。

筆順指導の手びき・表紙.JPG


posted by トナン at 18:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年04月22日

【修正】字体変遷字典 【心】悠惟惚惨惹情惜惣

jitai0324-0325.jpg

【惚】「悩・惱」の異体字として「惚」が使われることはあるが、反対に「惚」の異体字として「悩・惱」が使われることはないようである。

【惣】この字は中国では使われていないらしい。『經典文字辨證書』によると、「總」が正で「揔」「惣」が俗。『九経字様』によると「揔」が説文の字体で「緫」が経典の字体、とあるが説文には「揔」がみつからず「總」がある。『日本名跡大辞典』では「惣」を「總・揔・捴・統」の異体字としている。「総・總」の中国簡体字は「总」。
posted by トナン at 18:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

字体変遷字典 【心】悠惟惚惨惹情惜惣

jitai324-325.jpg

【惚】「悩・惱」の異体字として「惚」が使われることはあるが、反対に「惚」の異体字として「悩・惱」が使われることはないようである。
【惣】この字は中国では使われていないらしい。日本では「総・總・緫・ハ」の異体字として掲載している字典もある。「総・總」の中国簡体字は「总」だが表には載せなかった。
posted by トナン at 03:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月27日

字体変遷字典 【彡】彫彪彬彰影【彳】役

294-295.jpg

【彫】中国では「雕」を使う。「彫」と「雕」は大徐には別々に載っている。大徐の「雕」の籀文は「G」の字体。
【彬】大徐の古文と康煕字典の古文が逆。
【彰】一画目が大徐や康煕字典では横線だが当用漢字表も当用漢字字体表も縦線になっている。
【役】大徐の古文に偏が「亻」の字が載っており、それが康煕字典の古文に対応している。五経文字には「役」と偏が「亻」の字と両方載っており同字種としている。実際に書かれたものも江戸時代までは偏が「亻」のものが多い。
posted by トナン at 00:25| Comment(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月15日

字体変遷字典:【山】嵯嵩嶋嶺巌


jitai_254-255.png

【嵩】康煕字典に「嵩」の古文として「崇」が載っている。別に「崇」も親字として載っているが「嵩」は載っていない。

【巌】現代中国では「岩」を用いる。
posted by トナン at 14:09| Comment(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月02日

字体変遷字典:【山】峨峻島峰峯崖

jitai_205-251.png

【島】JIS漢字に5つの字種が登録され、康熙字典に4つの字種が登録されている。

【峰・峯】説文の大徐本にはあるが、段注本には記載がない。説文にある字体は「峰」ではなく「峯」。我が国でも中国でも「峰」を常用漢字として選んでいる。
posted by トナン at 15:10| Comment(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月29日

字体変遷字典:【尸】届屋屍屑展屠屡


jitai_242-243.png

【屑】2004年にJIS漢字の例示字体が「屑」から「屑」に変更された。説文解字の例示字体が不思議。

【屠】2004年にJIS漢字の例示字体が「屠」から「屠」に変更された。
posted by トナン at 16:44| Comment(0) | 文字あれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする